九州支部 佐賀県 市丸英二
令和元年度の日本歯周病学会九州五大学・日本臨床歯周病学会九州支部合同研修会が11月10日(日)に福岡市アクロス福岡で開催された。臨床と学術を一体化することを目的に,九州5大学と日本臨床歯周病学会九州支部会の会員がともに集い,情報を交換し,歯周治療学の発展を目指している。
本年は、九州大学口腔機能修復学講座・歯周病学分野(西村英紀教授)と当会九州支部会(中富研介支部長)の共同主管で行われ,315名が参加した(図1)
JSP九州5大学からは,歯周病学関連の基礎研究を主体とした口演発表が行われた(図2-5).顎顔面領域の幹細胞の遺伝子解析,エナメルマトリックスタンパクに対する胃潰瘍治療薬の薬理効果の増大化,P.gingivalisの上皮細胞への効果を通しての病態の解明,咬合性外傷に関与する細胞群の病理的研究,骨成長因子と超音波パルスによる骨再生効果等が発表された.大学臨床講座は,研究,教育,診療と多岐にわたった業務の中で,JSP九州5大学が高い研究レベルを維持していることを見ることができた。
また,臨床歯周病学会九州支部会会員による,症例報告の口演もなされた(図6-9)。時代を反映してか,ほとんどの症例が,再生療法に対する発表であった。禁煙指導,モチベーションの向上,エンドペリオ,セメント質剥離,広汎型重度歯周炎に対して,再生療法を応用して歯の維持や保存を積極的に推進する,当会らしい発表であった。臨床歯周病学会九州支部会の先生の症例発表に対して,大学の教授がアドバイスするだけではなく,「参考になった」と感謝する場面もあり,長年にわたって築き上げた5大学と九州支部の信頼関係を垣間見ることができた(図10,11)。
歯科衛生士会場では3題の一般口演と歯科衛生士教育講演が行われた(図12,13)。モチベーション,てんかん患者に対する歯周治療,高齢者に対する歯周治療について,歯科衛生士が歯周治療を通してどのようにサポートしていくかが報告された。その後,松延允資先生が“歯周基本の基礎知識”について,基本的な事項の確認と実践についてわかりやすく講演された(図14,15)。歯科衛生士特別講演が行われた(図9)。それぞれの患者で歯周病になるリスクが違うことを認識し,それぞれの患者に合った歯周治療を行う大切さをわかりやすく講演された。
午後からは,ポスターセッション会場で8題の発表があった(図16)。JSP5大学からの若手の先生からの症例報告や研究の発表が,JACP会員からは症例発表が行われた。ポスター発表では,会場に熱いディスカッションが繰り広げられた。
また,東京医科歯科大学の教授に就任された岩田隆紀先生が,間葉系幹細胞シートを用いた臨床研究について特別講演をされた(図17)。幹細胞を外から移入することによって再生を行う次世代の治療が,実用化の直前まで来ていることを知ることができた。また,客観的な臨床試験を行う上でのルールについても学ぶことができた。
最後に,千葉市でご開業されている弘岡秀明先生が,スカンジナビアアプローチについて,教育講演をされた。プラークコントール,メンテナンス,歯周再生療法,インプラント治療といった,現代歯周病学の基礎を,スカンジナビアグループが築き上げてきたこと,弘岡先生がそこで学び,日本での歯周病学の発展に多大なご貢献をされていることが,再確認できた。
参加者にとって有意義であり,歯周治療学を当会で学ぶことの有意義さを実感する1日であった。